滝井通信

漢字と車とコンピューター

2021.06.16

 みなさん、おはようございます。校長の松下です。
 突然ですが、みなさん先週の漢検のテストはどうでしたか?よく出来ましたか?今日はみなさんに、漢字の話をしたいと思います。

 みなさんの中には、漢字が好きだという人もいるでしょうし、そしてまた、漢字なんか大嫌いだ、という人もいるにちがいありません。漢字が好きだろうが嫌いだろうが、それはまったく個人の自由ではあるのですが、しかし漢字以外の文字でも同じように好き嫌いはあるのでしょうか?あるいは、アメリカ人の中にも、ローマ字が大好きだとか、AやBという文字を見るのが嫌でたまらない、という人がいるでしょうか?また、漢字には好き嫌いを言う日本人も、ひらがなやカタカナに好き嫌いを言っている人はほとんど見たことがありません。そう考えれば、文字の中で漢字だけが好き嫌いの対象となることが分かります。それはなぜなのでしょうか?

 このように好き嫌いの対象となるのは、実はそれが非常に便利な道具であることの裏返しであると私は考えます。
 漢字をひと通り使いこなせるようになるまでには、長い時間かけての努力が必要です。今はごく普通に漢字を使っている人でも、小学生の頃から書き取りテストに苦労させられたはずです。しかし、ある程度の漢字をマスターしてしまえば、こんな便利な文字はないと感じるのもまた事実です。

 習得するまでは苦労するが、マスターしたあとは二度と手放せないほど便利なものというこの条件は、自動車とコンピューターという道具にもあてはまります。そして、この二つにも、漢字と同じように人によって好き嫌いがあります。
 車とコンピューターは、上手に使いこなせばまことに便利な道具ですが、しかしそれを習得するまでには一定の努力が必要であり、そこまでの道は平坦ではありません。ここに、それらのモノに対する好き嫌いが発生する場があります。使える人はますます好きになるし、うまく使えない人はどんどん嫌いになってゆくというわけです。漢字に好き嫌いがあるのも、それとまったく同じといえるでしょう。

 さてみなさんの中で、漢字なんか嫌いだと思っている人でも、普段スマホはすいすい使っていますよね。スマホを使いこなすのは難しいですか?そんなことないですよね。
 スマホは便利だ、使いこなせれば楽しいと、自分でどんどん使い方を勉強したり、友だちに聞いたりして、今に至っているはずです。でも、みなさんの周りを見てください。いまだにガラケーを使っていたり、スマホをLINEと動画視聴くらいにしか使っていなかったり、「いや~、最近のICT機器は難しくて、よく分からないなぁ」とか言っている大人、たくさんいますよね。これって漢字の話と同じです。使いこなせれば、こんな便利なものはないのに、その努力とそこから得られるメリットを自ら放棄してしまっているわけです。

 それでは、みなさんにとってなぜ漢字を覚える必要があるのかという理由ですが、それは、言語がみなさんの思考そのものと深く関わり、人格を形成する力を持つからです。言語は考えたことを表現する道具だけではなく、それを用いて考えるという面があります。人間はそれぞれが持っている語彙(ボキャブラリー)を大きく超えて考えたり感じたりすることはありません。日本人にとって語彙を身に付けるには、何はともあれ漢字を覚える必要があります。日本語の語彙の半分以上は漢字だからです。

 私はみなさんに常々、心掛けてほしいことを三つ言っています。それは、「何事にも好奇心旺盛に興味を持つこと」「まずはやってみようとのチャレンジ精神を持つこと」そして「先生や友達と積極的にコミュニケーションをすること」の三つです。実は、この三つともに、言語は深く関わってきます。
 まず、先生や友達とのコミュニケーションについては、分かりやすいですよね。言語により人は、他者との関わりの中で伝え合う力を高め、自分の思いや考えを広げたり深めたりすることができるようになります。
 また言語は、論理的に考える力や深く共感したり豊かに想像したりする力を伸ばしてくれます。これは、好奇心旺盛に何事にも興味を持つことにつながっていきます。
 さらに言語は、生活や人生について考えを深め、人間性を豊かにし、たくましく生きる意志を培うのにも役立ちます。これはチャレンジ精神につながりますね。みなさんがみなさんらしく生きていくためにも、言葉の持つ価値への認識を深めるとともに、言語感覚をみがいていくことはとても大切なことなんです。みなさんが国語を勉強する意味はそういうところにあります。みなさん一生懸命勉強してくださいね。そして、次の漢字テストも頑張りましょう!

 それでは今日の私の話は以上です。どうもありがとうございました。